田向イチョウの木 移植工事

 
1.はじめに
本工事は八戸市田向土地区画整理にともない、都市計画道路予定地の真ん中にあたるため、移設、伐採、その場に保存等が検討されてきた。
地権者、市民の保存の訴えを受け、135メートル先の区画整理区域内の八戸市民病院近くに移設することになった。
2.毘沙門の大イチョウ
地域では毘沙門の大銀杏として親しまれ、田向地区のシンボルとなっている。イチョウの推定樹齢は550年、樹高21メートル、葉張り25メートル、幹回り6.55メートルの巨木である。
毘沙門天は四天王の一つ、北方鎮護の佛で、近くに新井田館跡があり、おおよそ北方にあたる場所へ毘沙門堂に毘沙門天を祀ったとされる。そのころに植えられたであろうと思われる。
田名部 清一 氏より
3.施工方法
八戸市田向土地区画整理組合様より早い段階でお話があり、根回し、剪定後、約1年半後に移植することになり、時間的には余裕があったが、推定樹齢550年、重量は120トン(計算上)、移動距離150メートル、国内でこれだけの大きいイチョウの移植事例が少なく、工法等を決定するのに大変苦労した。本工事の作業に当たり協会内に田向イチョウ移植プロジェクトを立ち上げた。
施工方法について様々な角度から検討を行い、最終的には樹木にもっとも負担が少ない立ち曳き工法とした。樹木を立てたまま、鉄骨の台座に乗せ、レールの上を鉄製のコロで曳く方法である。のべ日数約60日、のべ人工約650人を要した。

4.剪定、根回し、養成

前年まで状態は枯れ枝、幹の腐れが多く、葉の大きさも小さく、色も薄緑で衰弱している状態であった。
平成16年3月下旬〜4月上旬に剪定と根回しを行った。

着工前のイチョウ

 
剪定作業

全体を高さ14メートル、幅10メートルまで詰め、枯れ枝、弱っている枝等を取り除いた。
幹の一部に炭化している部分があり、毘沙門堂が焼失したときのもののようである。
また、何回か落雷に遭い枝もねじれている。

剪定作業後

 
根回し作業

10本程度支持根を残しすべての根を切り取り、切り口は防腐処理を施した。
樹木の乾燥等を防ぐため幹をワラで覆った。


養生管理作業

平成16年4月〜10月
移植するまでの間、灌水5回、栄養剤1回施した。

根回し作業の様子

 
5.移植

平成17年9月の様子。
剪定により芽吹きも良く、葉も大きくなり、葉の色も濃く樹勢も回復している。
幹から新しい芽も胴吹きしてきている。

全体のバランスを取るため更に剪定する。
 

根巻き作業の様子

この時点で重量は約100トン
根巻き完了状態




台座取り付け作業

レールに乗せた状態。前方に見える建物が市民病院。

途中、都市計画道路を横断。

移動完了。
植え穴に植え込む状況。
ジャッキを使って下げていく。

   

植え込み完了  平成17年12月30日